今日はお店もお休みですのでコラムでも書きます。
ここ数年、新車も中古車も本当に買いづらくなったと感じませんか?
新車は車両価格が上がっただけではなく、納期も長くなりました。
中古車も、低年式の過走行車がビックリするような値段がします。
日本国内にある車を、日本人だけでなく海外の買い手とも
奪い合うようになったことが大きな原因だと思います。
中古車オークションで海外バイヤーに勝てない
中古車販売店の仕入れ先は、主に業者専用のオートオークションです。
ところが最近は、海外への輸出を前提としたバイヤーの買いが非常に強く、
国内の中古車販売店が想定する小売価格を
オークションの落札価格が上回るようなケースも珍しくありません。
国内で200万円程度で販売したい車が、オークションでそれに近い金額、
場合によってはそれ以上まで競り上がる。
これでは仕入れた後の整備費用や保証、販売経費を考えると
一般的な中古車販売店は手を出せません。
その結果、豊富な下取り車が入ってくるディーラーや
大量の買い取り車両を抱える大手買取店以外は
良質な中古車を仕入れること自体が難しくなっています。
以前であれば商品価値が低いと判断されていた
低年式車や過走行車も、現在は海外需要があります。
日本では「古い」「距離が多い」と敬遠される車でも
海外では日本車というだけで評価されることがあります。
部品取りとしての需要もあるため
国内では廃車に近かった車まで価格が上がっています。
「安く買える中古車」が市場から少なくなっているのは、このためです。
新車も国内だけを見て作られていない
新車についても、日本国内への供給が
以前ほど優先されなくなっているように感じます。
正確な国内向け製造比率はメーカーや車種によって異なりますが、
自動車メーカーが世界市場を見ながら
生産台数や販売先を決めていることは間違いありません。
日本自動車工業会によると、
2024年には日本から約422万台の四輪車が輸出されています。
日本国内で作った車だから
日本の購入者へ優先的に安く供給されるとは限りません。
海外でより高く売れ、利益も確保できるのであれば
企業として海外向けを重視するのは自然な判断です。
国内では注文停止や長い納期が続く一方、
海外向けには供給されている車種もあります。
新車の受注停止や納期長期化には、年々増える安全・環境規制も影響しています。
衝突被害軽減ブレーキ、後方確認装置、排ガス規制
サイバーセキュリティなど、次々と新しい基準への対応を求められ
継続して販売してきた車種でも改修や再認証が必要になります。
安全や環境のために必要な規制であることは理解できますが
メーカー側からすれば、そのたびに開発費と認証作業が発生します。
基準へ対応できない車種は生産終了となり
対応する車種でも改良前後に長期間の受注停止が起きる。
国際基準への対応とはいえ、これだけ短期間に規定が変われば
メーカーも販売店も購入者も振り回されます。
最近の受注停止は単に「車が売れすぎて作れない」だけではなく
こうした制度への対応も影響していると思います。
円安が日本車を海外から見て安くした
新車と中古車の両方に影響しているのが円安です。
日本人にとって車の価格が上がっていても
外貨を持つ海外の買い手から見れば、日本の車は相対的に安くなります。
国内の販売店にとっては高すぎるオークション価格でも
海外へ輸出する業者にとっては、まだ利益が出る価格ということがあります。
つまり、日本人の所得や物価感覚では高すぎる車でも
海外基準では割安なのです。
国内の賃金が車両価格ほど上がっていないことも
日本人が車を買いづらくなった大きな理由です。
輸出と消費税還付の仕組み
もう一つ無視できないのが、輸出取引における消費税の仕組みです。
輸出取引には日本の消費税がかかりません。
輸出業者が国内で車や部品などを仕入れた際には消費税を支払っているため
その仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象となり
控除しきれない分は申告によって還付されます。
これは輸出企業に対する補助金という位置付けではなく
「商品が消費される国で課税する」
という消費税の仕向地主義に基づいた制度です。
ただ、その金額が非常に大きいことも事実です。
過去の例では、トヨタ自動車本社を管轄する豊田税務署について
2011年度の消費税の納税額が266億円だったのに対し、還付税額は1,360億円に上り
差し引きで1,092億円のマイナスだったことが
国会での国税庁の回答によって明らかになっています。
よく「豊田税務署は赤字」と表現されますが、
税務署自体の経営が赤字という意味ではありません。
その税務署管内で納付された消費税より
事業者へ還付された消費税のほうが多かったという意味です。
また、税務署単位の数字なので、
還付額のすべてがトヨタ自動車一社に対するものとは断定できませんが
日本を代表する輸出企業の本社がある地域で
これほど大きな還付超過が発生していることは
輸出取引に於ける還付金の大きさを示す象徴的な例だと思います。
中古車オークションでも、この仕組みは無関係ではありません。
例えば、国内で税込200万円で販売する車の場合
販売店にとって消費税を除いた売上は約182万円です。
一方、海外へ200万円で輸出すれば、その売上に日本の消費税はかからず
国内仕入れ時に負担した消費税は仕入税額控除または還付の対象になります。
もちろん、これだけで輸出業者が必ずもうかるわけではなく
輸送費、関税、為替変動などもあります。
しかし、円安によって海外での販売価格が高く取れる状況では
国内販売店より高い金額でオークションへ入札できる要因になります。
国内販売店が
「この金額では商品にならない」
と判断する価格でも、海外で販売すれば採算が合う。
消費税還付が単独で中古車価格を押し上げているわけではありませんが、
円安と海外需要が重なったとき、
輸出業者の強い購買力を支える仕組みの一つになっていることは確かですし
新車についても、円安や海外での販売価格、還付を含めた利益率まで含めれば、
メーカーが国内より海外向けの供給を重視するのは自然な流れだと思います。
日本市場の厳しさも影響している
日本のユーザーは
車の状態や傷、走行距離、保証、接客などに対する要求水準が非常に高い一方
価格には厳しい傾向があります。
販売する側から見ると、納車前に多くの手間と費用をかけても
その価値を販売価格へ十分に反映するのが難しい市場です。
一方、海外では日本ほど細かな外観を気にしない地域もあり
年式が古くても、走行距離が多くても
実用車や部品取り車として値段が付きます。
日本のユーザーへ細かな品質を求められながら安く販売するよりも
現状のまま海外へ売ったほうが早く、利益も出る。
それが現在の中古車流通で起きている現実です。
新車についても同じです。
国内への供給が絞られ、長い納期や受注停止が当たり前になると、
新車ディーラーも以前ほど値引きをする必要がなくなります。
中には残価設定ローンや、購入者が希望していない高額なコーティングなどを
事実上セットにして販売するケースも聞きます。
台数を追いかけて値引き販売するよりも、
一台当たりの利益を大きくする。
一度この売り方で利益を確保できることを知ってしまえば、
以前のような販売方法には簡単に戻らないのではないでしょうか。
今後、車はさらに買いづらくなるのか
円安が続き、海外での日本車需要が維持される限り
この状況が簡単に改善するとは考えにくいでしょう。
新車価格の上昇、新車の納期長期化、中古車の仕入れ価格高騰、低価格車の減少。
これらは別々の問題に見えますが、実際には世界市場の中で
日本の購買力が相対的に低下していることにつながっています。
かつての日本では、古くなった車を安く買い
必要な部分を整備しながら乗るという選択ができました。
しかし現在は、その古い車にも海外から値段が付きます。
「日本車なのだから、日本人が買いやすくて当然」
という時代ではなくなりました。
良い車が国内に残り、安心して購入できる環境を維持するには
販売店の努力だけでは限界があります。
日本人が車を買いづらくなった本当の理由は
車そのものが不足しているからではありません。
世界から見た日本車の価値は上がっているのに
日本人の購買力がそれに追いついていないからではないでしょうか。
今は「オークションで安く探してきて」が通用しない
当店にもよく「オークションで仕入れてきて欲しい」とのご要望を頂きます。
数年前までならオークションで安く買ってきて
必要な部分だけ整備すれば安く車を購入できることも有ったでしょう。
しかし、今の日本では「オークションで安く探してきて」は通用しない
そのあたりをご理解のうえご依頼頂ければと思います。
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